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披露宴が始まるまであと十分となった。会場の八割ほどが埋まった。成美の座っている席にも、女性二人が座っている。成美の正面と、左側である。二人は知り合いのようで、一緒に話しながら来た。成美が同じ席であることに気付くと、同時に「こんにちは」と言われた。成美も挨拶を返した。それから二人は、成美に話しかけることは無い。二人で二人だけに分かる会話をしていた。
問題なのは、もう一席である。もう一人が、今成美の前で話している二人の知り合いだったら、それほど恐ろしいことは無い。だからと言って、全く知らない人でも困る。一番いいのは、成美の知り合いであること。
開始まで残り五分になった時、成美のすぐ後ろから足音が聞こえた。気に留めていなかったが、成美の後ろから現れた人物は、成美の右側の席に座った。女性だった。黄色いドレスを着ている。目立たないようにと黒を選んだ成美にとって、黄色を選ぶ勇気は計り知れなかった。
黄色いドレスの女性は顔を上げた。その顔を見た成美は、喜びと言うよりは驚きが先行した。見覚えのある顔だったのである。
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