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「いいか、お前は職員室にある体育館倉庫の鍵を盗み出し、それを理科室の人体模型の裏に隠すんだ。簡単だろ? この作戦でのお前の役割はあくまでフェイク。本当の作戦がばれないようにするんだ。大丈夫。さっき確認したら、職員室の明かりは消えていた。警備員さえ気を付ければバレやしないさ」
校門の前で、最後の作戦会議をしながら、まだ肌寒い五月の深夜に薄着で外出してしまったことを後悔していた。街灯の明かりに蛾が群がる気配は無く、緑色の葉を付けた木の枝が、風によって揺らされた。自分たちが発している音以外の音は無く、深夜の住宅街に少しだけ季節外れの恐怖が蔓延している。
「俺はこいつと目的地の美術室へ行く。美術室は四階だから、たどり着くまでに時間がかかるだろう。だから、お前は自分の役目を果たしたら帰るんだ。俺たちを待たずに。ウロウロされて誰かに見つかっても困るからな。どこにもよらず、真っ直ぐ自分の家へ帰るんだ。たとえ俺たちが警備員の見つかろうとも気にしない。例え明日先生に呼ばれて事情聴取されても、お前はシラを切り通せ」
僕が首を縦に振ると、得意げに支持を出していた彼が頷く。そして、合流してからまだ一言もしゃべらずに俯いている彼も、頷いた。
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