プロローグ

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 僕も小走りで職員室に向かう。階段の手前を右に曲がってすぐ、職員室がある。職員室の手前の壁で屈み、慎重に入口の引き戸へ向かう。ゆっくりと体勢を起こし、引き戸のすりガラスから光が漏れていないことを確認した。引き戸を引き、職員室に忍び込む。嫌な静けさが、より一層恐怖を沸きたてた。  僕の左奥の突き当りに、予定表と書かれた大きな黒板がある。その横に小さなクリーム色をした箱が設置されている。そこに様々な部屋の鍵がある。僕は小走りでそこまで行くと、箱を開けた。何種類もの鍵が、赤、青、緑色の札と一緒に掛けられていた。その中から、青い札に『体育館倉庫』と書かれた鍵と、赤い札に『理科室』と書かれた鍵を取り出し、箱の扉を閉めた。  今までにないくらい緊張している。その緊張が僕を焦らせた。何かから逃げるように職員室を出て行き、階段を駆け上がった。二階の階段を上ってすぐ、二階と三階の間に理科室がある。理科室を入った奥に目的の理科準備室がある。人体模型は理科準備室あるため、そこまで行かなければならないのである。  理科室の鍵を開け、音をたてないように扉を開けた。同様にそっと扉を閉め、床を這うように小走りで理科準備室へ向かった。理科準備室の扉はいつも空いている。理科室さえ閉めてしまえば、入ることができないからである。理科準備室の入口を入ると、右側に人体模型がある。僕は、体育館倉庫の鍵を人体模型の裏に置いた。それだけでは見つかってしまうと思い、取り外すことのできる心臓の血管に上手く引っかけた。そして、外からでは分からないように肺で隠した。一度俯瞰でよく見てみたが、知っている人が見ても良くわからない。これで僕の任務は終わった。あとは理科室の鍵を返して帰れば良いのだ。  理科室を出て、上を見た。二人は上手くやってくれているのだろうか。気になりはするが、確かめるわけにもいかない。
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