彩芽と和彦。

1/1
前へ
/17ページ
次へ

彩芽と和彦。

「和くぅーん。」 「どうした?」 「寂しい。」 ベッドの上でウサギの、ぬいぐるみを抱き締めながら、唇を尖らせる恋人をチラリと見て目を逸らした。 「今、見なかった事にした。」 「してないよ。」 「寂しい。」 「ウサギと遊んでるでしょ。」 彩芽はヤダヤダと駄々をこねて、ベッドをギシギシと揺らしている。 駄目だ。 課題が終わるまで誘惑されたら…。 自分に言い聞かせながら、目の前の事に集中する。 「和くぅーん…。」 甘い声に、意識を削がれないようにぎゅっと目を瞑った。 「ウサギなら死んでるよ…?」 例えが可愛い。 暫く、黙っていると静かになった。 拗ねたのかな? そう思って後ろを振り向くと。 ちゅっ。 突然、唇に柔らかいものが触れて、驚いて、目を見開くと彩芽が無邪気に笑っていた。 それで全てを理解した。 「…………ばか。」 そっと呟いて、彩芽の頬を優しく撫でた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加