3 千里の道も一歩から

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2週間を期待や不安という言葉では表せない、それらが複雑にからまった気分で過ごした。 そしてやっとそのメールはきた。 昔ながらの結婚相談所と違って、結婚情報サービスというのはお見合いに立ち会ったりはしない。 一定の情報を提供して、気に入った人がいれば申込み、相手も了承すれば双方に連絡先が開示される。 そこから先はお互いの責任でおつき合いください、というシステムだ。 情報自体もメールで送られてくることになっている。 「今月のご紹介会員さまは12名です。条件だけで判断されることなく、積極的にお会いになってみることをおすすめします」 会員番号をクリックするとプロフィールが表示された。写真を見るにはパスワードを入力する必要がある。 あさ美は次々に番号をクリックしていった。 写真も一応全部開いてみる。 「ヘンな顔」 といいたくなるような地味な男ばかり出てくる。 想定の範囲内とはいえ、パーティーで見かけた人たちよりさらに一段と地味に見えるのはどうしたわけだろうか。 あさ美は入会に際して、10歳ぐらい若く見えるように、という注文をつけてスタジオ写真を撮ったというのに。 間口を広く、とのアドバイスにしたがって登録したため、幅広い年齢層の会員が紹介されてきた。 その中で、まあ会ってみてもいいかなと思える比較的年の近い5人に申込みをすることにした。 返事のメールは翌日すぐにきた。 「会員番号○○さんからお断りの返事がきています」 その翌日にもまとめて2人分。 「会員番号○○さんから」以下同文。 あまりに早い返事というのも味気ない。 もうちょっと迷っていただいてもよくないですか。 そして残りの2人からの返事は待てど暮せど来なかった。 向こうは会ってみてもどころか鼻も引っかけないというわけね。 なぁにが「お出会い」だよ。 出ばなをくじかれた形になってあさ美は落胆した。 でもまだ入会したばかり、期間は1年あるからじっくりやればいいさ。 楽観的に考えるとする。
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