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4 婚活いばら道
男性のプロフィール欄には
「年齢・56歳、職業・税理士、婚歴・離別、住所・調布市」
と書かれていた。
(税理士かぁ、年はかなり上だけれど、悪くないかも……)
本音ではもう少し年の近い相手を希望していたあさ美ではあるが、まんざらでもない様子で「あなたへのメッセージ」に目を移す。
「離婚して15年が過ぎました。男手ひとつで育てた子供たちは成人し、これからが自分の時間だと思っております。私の第二の人生を共に歩いてくれるパートナーを探しています」
子供たち? 成人?
あわてて家族欄を見る。
「長男・24歳・公務員・同居。長女・21歳・大学生・同居」
子どもがいてもやむなしと思ってはいたものの、せいぜい小学生くらいまでしか想像していなかった。
こんなに大きな子供がいて、しかも同居している……。
「ありえなーい!」
婚活初心者のあさ美にとって、このプロフィールはインパクトが強すぎる。
私はまだ、第一の人生の道半ばなの。
余生を共に、みたいなお誘いには申し訳ないけどつき合えない。
少しだけ躊躇はしたものの、「お断りします」をクリックする。
「お断りの返事を送信しました」
の文字があさ美の目にむなしく映る。
自分もあっさり断られて少なからず傷ついたが、罪のないこのおじさんもあさ美の返事に傷つくことだろう。
そしてお断りした本人にも、後味の悪さはつきまとうものだ。
見知らぬ者同士が人知れず傷つくこのシステム、ドライに割り切るしかないのだろう。
非情なシステムに慣れるのにさほど時間はかからなかった。
10人に申し込めばそのうち1人か2人には会うことができた。
あさ美よりひとつ年上だというその男は中肉中背で、髪型もこざっぱりしていた。
だがトレーナーにジーパン姿で現れたのには少し驚いた。
休日だからラフな格好でも別にかまわないけれど、トレーナーの胸に大きなスヌーピーのアップリケがついているのは一体何のまじないなんだろうか。
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