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壇上に満面の笑みを浮かべた中年女性がマイクを持って立った。
集まっているのは男女各30名。所在なさそうに、少し照れたような表情で、お互い話すでもなく立っている。
あさ美もこの場に集まった他の人たちと同じように、期待と不安が入りまじった気分でグラスを持っていた。
マイクの女性が声を張りあげる。
「皆さま、『クルージングDE(で)ハッピーパーティー』にようこそお越しくださいました。どうぞステキな出会いがありますように! それでは大きな声でお願いしまーす。カンパーイ!」
東京湾を一周するクルージングの船上で、あさ美のお見合いパーティー初体験は始まった。
40歳を迎えるまでお見合いだの結婚だのにはまるで興味がなかったあさ美が、「婚活」を始めたのは突然の変化だった。
あさ美は都内の百貨店に新卒で入社して今日まで働いている。抜群にできるほうではなかったけれど、それなりに頑張って仕事をしているうちに気がついたらこの年齢だ。
去年秋のことだった。マネージャー級昇格試験にエントリーしたのだが、予想はしていたものの結果はやはり不合格。
普段顔も見たことのない本社の人事部長が来て面談があり、言うではないか。
「論文は合格点だったのですが、マネジメント面での実績が不足していますね。今回は残念ですが、実力はあるので今後も頑張ってください」
言葉はていねいだが嫌味たっぷり。今後も、って言ったって、この試験には40歳まで、という年齢制限がありませんでした?
不穏な気分で一人暮らしの部屋に帰り、ソファーで脱力してぼんやりとテレビを見た。夜のニュースバラエティ番組には、今話題の女性経済評論家が出て何ごとかまくしたてている。
「あー、絵に描いたような勝ち組ですこと」
画面に向かってつぶやいた。
私にゃそもそも仕事一筋なんて向いていないワケ。これからの人生、考え直さなくちゃね……。
心の中でブツブツ言いながらリモコンでテレビを消し、ソファーの上で寝返りをうった。
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