1 あさ美の船上パーティー 

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パーティーがあるから出てみたら、と勧められて参加したこの『クルージングDE(で)ハッピーパーティー』にはサブタイトルがあって、「35歳~42歳の方集まれ」となっていた。 あさ美は受付で受け取った番号札を胸につけた。 いっしょに渡された参加者リストを見ると「女性2番・あさ美・41歳・東京都」というように最低限のプロフィールが列記されている。 一瞥して女性のメンバーは、いや男性を含めてもあさ美より若い人がほとんどだ。 乾杯の音頭でパーティーが始まる。まずは船内のホールで男女が輪になって、二人ずつ向かい合い一分間で互いに自己紹介をしあう。そして一分話したら一人横にずれてまた同じことの繰り返しである。 女性はけっこうな美人や華やかな雰囲気の人もいるのに男性は押しなべて地味だなあ、とあさ美は思った。 皆胸につけた番号札とリストのプロフィールを必死に目で追っている。30人もの自己紹介を一気に聞いた時点で、すでに軽い疲れを感じてしまった。 しかし肝心のフリータイムはこれからだ。 デッキに出ると、椅子が二つずつ向かい合わせに置いてある丸テーブルがいくつも並べてあった。 「気になった方と積極的にお話ししてくださいねぇー!」 司会者が高らかに言う。あさ美がちょっといいなぁと思ったのは二人。 システムエンジニア41歳と食品会社勤務の35歳だ。 しかしフリータイムが始まってすぐに彼らは、どちらも他の女性と話を始めてしまった。 しばらく他の相手と話してみよう、と周りを見回したが何故か皆他の女性の近くに行ってしまい、あさ美には誰も話しかけてこない。 (あれ、男女同じ人数じゃなかったっけ?) と思いながらも、デッキの椅子に座りしばらく誰かが空くのを待ってみることにした。 天気はよく頬にあたる風は心地よい。 あさ美の隣のテーブルに座った女性は今日のメンバーの中では若いようで、二人の男性を前に楽しそうに話していた。 (ふーん、やはり若いほうに人は集まるんだ) そう思いながらぼんやり見ていると、メガネをかけた神経質そうな男性が声をかけてきた。 「ここ、空いていますよね」 「ええ、どうぞ」 にっこり笑って答え、男性が座るのを見ながら (何を話そうかな……)
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