2 再会と出発

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2 再会と出発

銀座通りに面したガラス張りのカフェで人の流れをぼんやり見ていると、ほどなくして待ち合わせの人物は現れた。 「やっぱり銀座は落ち着くわよねー」 そう言ってあさ美の前に座ったのは、頼子(よりこ)である。 先日のクルージングのお見合いパーティーで出会った人物の中で、その後唯一あさ美が再会できたのは彼女なのだ。 パーティーのフリータイムでのこと。 あさ美が誰にも相手にされず、デッキのベンチで波を見つめながら、ふてくされ気味にローストビーフサンドにかぶりついていた時だった。 「あさ美?」 声をかけられて振り向くと、胸に17番の番号札をつけた女性が笑いかけている。誰?  参加者のリストを見ると「女性17番・頼子・42歳・東京都」とある。 「えー、頼子さん? こんなところでお会いするなんて」 頼子は、あさ美が高校時代に所属していたコーラス部で一年上の先輩だった。 部活では親しくしていたが、顔を合わせるのは20年ぶり以上ではないだろうか。 「久しぶりだよねー。でもこんなところで女同士で盛り上がってもしょうがないからさ、今度ランチでもしましょうよ。あとで連絡してね」 ピンクのアドレスカードを渡されたというわけだ。 パーティーで「アピールしたい相手に渡してください」といって事前に配られていた名刺大のカードだ。 学生時代の友人はほとんどがすでに家庭を持っている。 たまに会っても子どもの学校や塾の話なんかを聞かされて、ちっとも興味が持てなくて浮いてしまうあさ美だ。 職場でも年々独り者の同僚は減っていくばかり。独身の先輩に会えたのがなんとなく心強い気分になり、さっそく連絡してみたのだった。 頼子は旅行会社で仕事をしているという。 学生時代から得意だった英語を生かして、海外ツアーの添乗員をしているのだ。 久しぶりに会った二人だが、すぐに気分は高校時代のノリに戻っていた。変わったのは、コーラス部でアルトだった頼子の声がバスにシフトしていることだろうか。 「いやー、お互い年とったよね」 「でも先輩を追い抜きゃしませんからー」 「ところであさ美はずっと独りなの?」 「ええずっと。結婚にはあまり興味もなかったし、まさかああいうパーティーに参加するなんて夢にも思っていなかったけど」 「突然どうしちゃったの?」 「まあ、なぜか急に気が変わったってことで。で、頼子さんは、ずっと独り?」
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