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最悪だ……この世の終わりだ……こんな事、誰も望んでいなかったのに……。
目の前に広がるのは、血の海でも、津波でも、土砂崩れでもなく、死体の山でも、山火事でも、地割れでもない。
それでも世界が終わっていく。
自由の女神がひっくり返ればまだ笑い事だ。ピサの斜塔を直塔にしたら世界は変わるか?
残念ながら自由の女神は相変わらず空へ向けて腕を上げているし、ピサの斜塔はきちんと傾いてる。
それでも世界が終わっていく。
長い歴史も、経験も、友情も、思い出も、秘密の隠れ家も、特別な合言葉も、君との会話も。
慣れ親しんだこの長剣のグリップも、長年使い続けたオンボロコートも、靴も。
年下扱いしてくしゃくしゃにされたこの髪も、君に触れた感触が消えない手のひらも。
最愛のパートナーを、相棒を。仲間を。
この世界に、奪われた。
デジタルなゲームではあるけど、本気だった。
君と、最果ての地へ行く。それが目的で目標。だった……。
「停電なんて、嘘だろ……」
ブツンと電源が切れる音が、脳を揺さぶった。
ピサの斜塔を真っ直ぐにしたら、世界が変わってデータが戻らないかな……。
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