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「わたしが、わたしでいる間にわたしを殺してね、約束よ」
それが八歳になった時、双子の姉の言葉だった。
わたし達は産まれた時に既に呪われた未来が待っていた。
国中の占い師が祝いの言葉を述べる中、ひとりの占い師がこう言った。
「王よ。産まれ出たひとりは救世主となり、もうひとりは破壊者となる。これは変えられない未来」
どちらかが国を滅ぼすであろう。
占い師は滅びの子には花の印があるだろう。
それが、占い師の言葉だった。
だが、姉にも、妹のわたしにも花の印はなかった。
占い師の言葉は黙殺された。
それが、姉が八歳になった時、花が咲くように痣が背中にわいて出た。
父である王は、娘を塔へ閉じこめた。
しかし、何者かによって姉は殺められてしまった。
わたし達は仲の良い姉妹だった。
だから、冥府で姉が生き返った時にも、国中の占い師よりも、誰よりも先にすぐにわかった。
姉の墓を荒らした者がいて、姉を魔術でもって生き返えらしたのだ。
それからは剣術、魔術を主に学んだ。
わたしは次の年で十六歳になろうとしていた。
ある日、冥府の扉が開き、姉が姿を現した。
青い馬に乗って人々に疫病を広げていた。
わたしは、黒い馬に乗って、姉の前に現れた。
「シー」
姉の最後の言葉は、一生、忘れない。
「シー」
わたしも姉の名を呼ぶ。
「約束を守って」
姉がわたしを見て言う。
魔術を施した矢をわたしは姉に向けた。
わたしが放った矢は、吸い込まれるように、姉の胸へと届いた。
「約束を守りに生きてきたわ」
わたしが言うと、姉が笑って、姿を土塊へと変えていった。
幼い頃、交わした約束は守られ。
また、占い師の言葉も守られた。
だが、誰も知らない。
いつしかわたしの足の裏にも花の印が浮き出た事に……。
わたしの幸せはシーあなたと共にあった。
あなたがわたしを「シー」と呼んでくれていた日々に……。
シュリナとシュリア。
あなたのいない世界ではわたしは息が詰まってしまう。
だから、シー。
「わたしが、わたしでいられるうちに、わたしを殺してね」
天の采配で生まれ変わり、わたしを見つけて殺してね。
それまで、わたしはこの世界の覇者となろう。
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