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第1話 夢破れ、地を這う
みんなは夢を持っているだろうか。
子供のころ誰でも一度は、『しょうらいのゆめ』みたいな題名の作文を書かされたことがあると思う。「サッカー選手」、「メジャーリーガー」、「お医者さん」、「お花屋さん」などなど…子供たちの夢は尽きることはない。そして俺の場合は、それが「将棋の名人」だった。
夢に向かって努力することは素晴らしいことだ。なぜなら、学校の先生がそう教えてくれたからだ。
夢があれば、辛い練習も乗り越えられる。夢があれば、過酷な勉強も投げ出さない。夢があれば、自分を成長させるためのきっかけになってくれる。
だけど…もし夢に届かなかったときは……?
自分の青春の全てをかけて鍛錬を積み、胃が締め付けられるような重圧にも耐え、それでも夢に届かなかったときは……?
プロ棋士の養成機関『新進気鋭棋士奨励会』縮めて『奨励会』。俺がその門戸を叩いたのは、少学5年生の夏休みだった。お袋に手を引かれ、編入試験へと向かったあの日のことは今でも時々思い出す。
俺は幼かった。自身に満ちていた。これから一生懸命頑張りさえすれば、必ず名人になれるものだと信じていた。
期待と不安で胸をいっぱいに膨らませ、足を踏み入れたプロへの道……そして俺は…………。
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