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ぴたり、と足が止まった。突然声が響いた気がした。眉を潜めながら辺りを見回す。しかし人影はない。
『…だれか、お願いだ…助けてくれ……』
「……誰かいるのか?」
声を上げるが、返事はない。
『誰でもいい…私達を助けてくれ……』
なおも声は響く。
「……こっちからか?」
それは、登ってきた道から外れた茂みの中から聞こえてくるようだった。誰かが足でも怪我して困っているのかもしれない。正直面倒臭かったが、これで野垂れ死にでもされたら寝覚めが悪い。
ガサゴソと進むと、そんなに遠くない場所に、小さな洞窟があった。
「へぇ……こんなとこあったのか」
屈まなければ入れないような小さな洞窟。
「おーい、誰かいるのかー?」
そう叫びながら中に入る。まさかこんなところに入るようなバカはいないだろう……。そんなことを考えながら歩いていくと、突然足場が無くなった。
「!!!……うぉあっ!!!!!」
突然のことに驚愕し手足をジタバタとするが、掴まれそうなものも足場になりそうなところも見つからなかった。
「うわぁあああああ!!!!!」
どこへともなく続く暗い穴の中を、落ちていく。
落ちていく。
落ちていく。
落ちていく。
突然、明るい場所に出た。
はっ、と顔を上げると、目の前には人の顔。
銀色にも見える美しい髪を後ろに流し、色の白い肌は瑞々しく張りがある。年の頃、16、7歳の少女だろうか。祈るようなポーズのまま、青い双眸を驚愕に見開いている。
一瞬でそこまで認識したあと、俺はその少女の足元に落っこちるようしにて倒れこんだ。
頭の中に星が回る。
遠くで女の子の声が聞こえた。
頭が痛い…………。
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