名の知らぬ花

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凪いだ世界が見せる 虚構の安穏な生活 一人きりで過ごした 空虚で白黒(モノクロ)な日々 見えない傷から溢れ出す 緋色の水に浸かったまま 鼓動が止まるのを望む毎日 扉を叩くのはだぁれ? このままでいいと耳をふさぎ 痛みを恐れて瞳を閉じる 柔らかな風と優しい光から 顔を背けてうずくまる 見えない傷が広がって 緋色の水が溢れ出す 鼓動よ止まれと祈る中 あたたかな手が傷を塞いだ そこにいるのはだぁれ? 枯れ果てた心に零れ落ちた 一粒の雫 微笑む瞳から零れ落ちる 優しい涙 触らないでと臆病な私 振り払う手を捕まれた 逸らせない瞳を私に向けて あなたは微笑む 瞳に涙をたたえたまま 傷口を塞ぐ手に力を込め 痛みを分かつように 白い服を朱く染めて 弱い私を包み込む 柔らかなぬくもりに目を閉じる 微かに響く鼓動が重なり 同じ拍動を刻む この気持ちをなんと呼ぼう 枯れ果てた心に咲いた 一輪の花 弱々しくも真っ直ぐに咲く 花の名を 私は未だ知らぬままでいるimage=498330659.jpg
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