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あの時を思い返すと…思い返してしまった途端、私の持っていた包丁の動きが止まった。 刻んだ玉ねぎが私の視界を歪ませる。 ラジオからは懐かしいメロディーが流れている。 そのメロディーこそが、私を過去へと誘ってしまった。 「ユウ…」 心の中でそっと呼びかける。 今、何をしてるの?何処にいるの?今…。 「緑~!!」 図書館に向かう途中で後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。 「ユウ。どうしたの?」 「お前、図書館行くんだろ?俺も!」 ユウ…斉藤祐介は、機敏な駆け足で大きめのキャンバスリュックを揺らしながらやって来た。 長身を引き立たせるすらりと伸びた手足と、部分的にこだわりを持ったファッションは彼にとても似合っていた。 いつも変わらないのは、首から掛けている長めのネックレスで、それは彼女からの贈り物だった。 ペンダントが揺れる度、私の心はチクチクと痛んだ。 私はユウのことが、好きだった。
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