Prologue

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結果的に、死因は事故死。 公園からボールを追っかけて道路に出た少年を助けようとしてトラックにぶつかった。 自分の目の前で誰かが傷つくのが嫌で、幾度となく困っている人、事故に遭遇しそうな人たちを助けてきたけれど、遂にだめだった。 自分の家は昔からある道場で剣道を教えていた。師範代である父と朗らかな母、二人の弟妹を持つ久遠津(くおのつ)優(ゆう)希(き)。 そんな四人の家族に囲まれていて幸せだった。 物心着く前には、師範代に稽古をつけて貰っていたし、他の武道もそれなりに嗜んでいた。厳しい稽古を受けていたからなのか、元々なのか。運動神経が良く、感情が表に出にくい子供だった。 幼少期、多感な時期の子供達は、子供らしくない子供にどこか自分とは違うのを感じたのだろうか。 周りから異質な子と、敬遠されがちではあったが、高校に入った今では、少なくない友人達と、高校生活を送り学生を謳歌してた・・・ 今も昔も心の奥底では自分に違和感を感じてた。 俺には何かが足りない。毎日、そんな不安にかられていた。 自分でも、何をそんなに悩むのか、全くと言ってわからなかったけど。 唯一、足りない物が満たされていくような、安心感のある場所は自分の家と、その庭だった。 家族にも言ってなかったけど、竹林に囲まれていた、庭の奥深く。葉が擦れる音、鳥や動物たちの鳴き声、土の匂い。自然の中で精神統一をしている時は、心が透き通り、何かが満たされていく気分になる。 田舎だったので、それが終わるといつも、鳥や動物、その中には狐や狸、鹿など人には懐かないであろう動物達に囲まれてた。その時間は何よりも至福の時間だった。 敏い父は気づいてただろうけど、誰にも言ってない俺の友人達だ。
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