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産まれたばかりの神。余りに小さい存在で、消えてしまいそうであったので、他の神が守っているらしい。
「でな、疫病神も言っていて、守ってゆかなければ消えてしまうらしい」
神?人の個を分からない、助けることもしなければ、眠ってばかりで、時々、何かする気まぐれな存在なのか?俺。
……確かに、少し似てはいるが、神ではない。
「七人揃うと、世紀末だぞ。俺が神ならば、七人目だ」
「あっちの界では、消滅を救った救世主でしょう。あのままだったら、粛清で消えてしまったよ」
どうも、釈然としない。救世主的なことは何もしていない。
「これからも、よろしくな。俺の神様」
琥王が握手を求めてきた。俺が手を出さないと、琥王が強引に手を握り締めてきた。
俺にとっては、この琥王の手こそが救いであった。
後日、やっと安廣と芽実が籍を入れ、身内だけで結婚式が行われた。
その結婚式の席で、結婚指輪のすぐ後に俺が呼ばれ、二人が頭を下げた。
「俺達の養子になってください」
親戚が揃っている場所で、断り難い。どうしたらいいのか迷ってみたが、心は決まっていたことに気がついた。
異なる界では、俺は本当の息子であったのだ。
「よろしくお願いします、父さん、母さん」
本当の家族になろう。
が、やはり俺は、籍はともかく、名字は薬師神のままにした。善家はどうにも、好きになれない。
『返還の血』完
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