第四章 忘れてゆく人

9/28
187人が本棚に入れています
本棚に追加
/222ページ
「薬師神、頑張れ」  琥王に背を支えられて、そっと芽実に近寄ってみた。 「薬師神……善家……」  芽実が俺に手を伸ばしていた。 俺が、躊躇していると、 琥王が俺の手を掴むと、芽実の手を握らせていた。 「そうか、薬師神先輩から、 子供を預かったのね……大切に育てるって誓った……」  芽実が、にっこりと笑った。 「……泣かないで、一弘君」  その言葉に、俺は涙が落ちて止まらなかった。 琥王がハンカチを出したが、ポケットに戻すと、 スポーツ用のタオルを鞄から出した。 そこまで、泣かないと思うが、 頭から顔までタオルで隠してくれた。
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!