第一章 命か金

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「……琥王」  やや、あきれてしまった。 「薬師神は、一人で行くつもりだったろ?」  それだけではない、 琥王は芽実に墓参りに一緒に行くつもりだといい、接待までされていた。 琥王は、まだ開いていない店内で、スープを飲み寛いでいた。 「良かった、一弘君にお友達ができて。 いつも一人だから心配していたのよ」  芽実は、琥王に焼きたてのパンを出していた。 琥王は、餌付けされ易いので、あまりパンを出さないで欲しい。 「でも、 そうか墓参りか……一弘君のご両親はね、絵に描いたような、 きれいな夫婦だったのよ」  俺の両親は、写真も多くは残っていない。 俺は、生きている両親の記憶はない。 それでも、時折は両親に言いたい事も出てくる。 そんな時、俺は生きていて、彼らは死んでいるので、 仕方なく、話したい事は墓にすることにしたのだ。
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