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「薬師神の両親に、ご挨拶しようかと思ってさ」
朝の電車は、土曜日のせいか空いていた。
電車に乗り込むと、空いている座席に座った。
「何の挨拶?」
「お付き合いしています、かな?」
「…………」
何のお付き合いなのだろうか。
そんな変なことを、墓で言われたくない。
「あのな……」
「まあ、一緒にお仕事していますので、よろしくみたいなものだよ。
それに、理由なんてなくて、ただ一緒に居たいだけ」
空いているが、電車には人目がある。
慌てて周囲を見回したが、誰も会話は聞いていなかった。
「……ほら、薬師神は、神憑きが周囲に幾人もいて、
慣れているのかもしれないけれど、
俺は同じ神憑きは、薬師神が始めてだからさ。
やっと会えたという感じ……」
琥王の見つめる窓の外は、田園地帯に入っていた。
窓の外一面に、植えたばかりの稲が広がっている。
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