第一章 命か金

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「薬師神の両親に、ご挨拶しようかと思ってさ」  朝の電車は、土曜日のせいか空いていた。 電車に乗り込むと、空いている座席に座った。 「何の挨拶?」 「お付き合いしています、かな?」 「…………」  何のお付き合いなのだろうか。 そんな変なことを、墓で言われたくない。 「あのな……」 「まあ、一緒にお仕事していますので、よろしくみたいなものだよ。 それに、理由なんてなくて、ただ一緒に居たいだけ」  空いているが、電車には人目がある。 慌てて周囲を見回したが、誰も会話は聞いていなかった。 「……ほら、薬師神は、神憑きが周囲に幾人もいて、 慣れているのかもしれないけれど、 俺は同じ神憑きは、薬師神が始めてだからさ。 やっと会えたという感じ……」  琥王の見つめる窓の外は、田園地帯に入っていた。 窓の外一面に、植えたばかりの稲が広がっている。
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