第一章 命か金

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「そうなの。世の中は理不尽よね。 私は、息子を病気で亡くしてしまってね」  女性は、この家の者であった。  玄関は広く、大きな絵がかかっていた。 リビングに通されると、コーヒーカップのコレクションが飾られていた。 その中に、サッカーボールの置物があり、トロフィーだと分かった。 その横に、ユニホームを着た少年の写真が置かれていた。  女性の亭主は留守で、 もしかしたら、この会を認めていないのかもしれない。 「麦茶でいいかしら」  飲み物を勧められたが、麦茶というのがレトロであった。 「はい」  しかも、麦茶が甘い。 「息子はね、スポーツ選手になるのが夢で、 コーラとかは飲まなかったのよ」  彼女の願いは、息子に再び会う事、 それは、とても強い。 でも、叶える事はできない。
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