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「そうなの。世の中は理不尽よね。
私は、息子を病気で亡くしてしまってね」
女性は、この家の者であった。
玄関は広く、大きな絵がかかっていた。
リビングに通されると、コーヒーカップのコレクションが飾られていた。
その中に、サッカーボールの置物があり、トロフィーだと分かった。
その横に、ユニホームを着た少年の写真が置かれていた。
女性の亭主は留守で、
もしかしたら、この会を認めていないのかもしれない。
「麦茶でいいかしら」
飲み物を勧められたが、麦茶というのがレトロであった。
「はい」
しかも、麦茶が甘い。
「息子はね、スポーツ選手になるのが夢で、
コーラとかは飲まなかったのよ」
彼女の願いは、息子に再び会う事、
それは、とても強い。
でも、叶える事はできない。
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