187人が本棚に入れています
本棚に追加
/222ページ
「なあ、薬師神、土曜日に時間はとれないかな」
きついカーブの先に、降りる駅がある。
俺は、このカーブの辺りで目覚めるのが、常であった。
「土曜日は墓参り」
俺が生まれた祝いは、母親が体調を崩していたせいで、
一か月半ほど遅れていた。
ゆえに、五月の墓参りになる。
「……そっか、俺も行くよ」
会った事もない人の、墓参りに行くものなのか。
「……俺だけで、墓参りするから来るなよ」
混み合う駅を抜けると、学校まで歩く。
バスも出ているのだが、混んでいるバスに乗るよりも、
歩いた方が早い。
琥王は人目を引いていて、特に女子生徒は、常に見ていた。
地毛の金色に近い髪に、同じ系統の目の色。
琥王は、大型の猛獣のようでもあった。
最初のコメントを投稿しよう!