第四章 忘れてゆく人

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 次の日、 ごく普通に過ごしていたが、昼前に先生に呼ばれた。 「先ほど学校に連絡があったのだけれど、どう言ったらいいのかな。 田所 芽実さんが交通事故に遭われて意識不明だそうだ」  婚姻届を出しに行き、 交差点で信号無視した車に突っ込まれたそうだ。 「先生……」  俺は先生に、 両親が死んで芽実が育ててくれたと、言葉にしていた。 その言葉が出た瞬間、目から手のひらにボトボトと涙が落ちていた。 自分が泣いているというのが不思議で、 先生の言葉が、どこまでも遠かった。
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