第四章 忘れてゆく人

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 安廣に肩と背を叩かれて、 俺はやや安心したが、しがみ付いて泣いていた。 不安で、仕方がなかった。 こんなふうに、日常は突然に終わってしまうものなのかもしれない。 「いくらでも、泣いていいよ。怖かったね……」  この年で、泣くなんてみっともないのかもしれないが、 一人ぼっちになった気がしたのだ。 世界の中で、一人になったような気分であった。 「安廣さん、芽実さんが安廣さんが結婚したら、 俺、家に戻るって約束しました」  こんな寂しい病室で、こんな寒い空間で、 何かが終わっていいはずがない。   「芽実から聞いているよ。芽実は、すごく楽しみにしていた。 離れて、やっと、 一弘君は私の、私たちの子供だったって気付いたと言っていた」  子供だと言ってくれて、ありがとう。 俺は、一人では無かったのだ。
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