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安廣に肩と背を叩かれて、
俺はやや安心したが、しがみ付いて泣いていた。
不安で、仕方がなかった。
こんなふうに、日常は突然に終わってしまうものなのかもしれない。
「いくらでも、泣いていいよ。怖かったね……」
この年で、泣くなんてみっともないのかもしれないが、
一人ぼっちになった気がしたのだ。
世界の中で、一人になったような気分であった。
「安廣さん、芽実さんが安廣さんが結婚したら、
俺、家に戻るって約束しました」
こんな寂しい病室で、こんな寒い空間で、
何かが終わっていいはずがない。
「芽実から聞いているよ。芽実は、すごく楽しみにしていた。
離れて、やっと、
一弘君は私の、私たちの子供だったって気付いたと言っていた」
子供だと言ってくれて、ありがとう。
俺は、一人では無かったのだ。
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