第四章 忘れてゆく人

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「大丈夫、ちゃんと助かるよ」  安廣の言葉に、俺は何度も頷く。 「あ、出て来た」  安廣が、運ばれてゆく芽実に走り寄った。 芽実の目が薄っすらと開き、安廣に話しかけていた。 俺が走り寄ると、芽実が少し不思議そうな顔をした。 「君は誰?」  芽実の記憶から、俺は消えてしまったのだろうか。 芽実は、必死に思い出そうとしているように、 顔をしかめていた。 「……君の名前を教えて……」  芽実が手を伸ばそうとしたが、看護師に押さえられ、 病室へと運ばれて行った。  病室は入室禁止にされ、安廣と廊下で待っていた。 「芽実、大学時代に戻っているみたいだった。 記憶が混乱しているのだろう」  安廣に、大学に合格したのよと言ったのだそうだ。 このまま、記憶が戻らなければ、俺の存在は芽実から消えている。
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