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「大丈夫、ちゃんと助かるよ」
安廣の言葉に、俺は何度も頷く。
「あ、出て来た」
安廣が、運ばれてゆく芽実に走り寄った。
芽実の目が薄っすらと開き、安廣に話しかけていた。
俺が走り寄ると、芽実が少し不思議そうな顔をした。
「君は誰?」
芽実の記憶から、俺は消えてしまったのだろうか。
芽実は、必死に思い出そうとしているように、
顔をしかめていた。
「……君の名前を教えて……」
芽実が手を伸ばそうとしたが、看護師に押さえられ、
病室へと運ばれて行った。
病室は入室禁止にされ、安廣と廊下で待っていた。
「芽実、大学時代に戻っているみたいだった。
記憶が混乱しているのだろう」
安廣に、大学に合格したのよと言ったのだそうだ。
このまま、記憶が戻らなければ、俺の存在は芽実から消えている。
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