第四章 忘れてゆく人

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「……ちょっと待って」  琥王は、近くの募金箱に小銭を全部入れていた。 「よし、行くぞ。 薬師神、その力は、今、使うものだろう?」  琥王が腕を引き歩き出したが、暫くして立ち止まった。 「病室はどこ?」  琥王は、病室が分からないのに、俺の手を引き歩いていたらしい。 「こっち」  廊下の安廣が消えているので、中に入る事ができるのだろう。 病室のドアを開くと、各種のチューブや機械に繋がれた芽実が、 不安そうに天井を見ていた。 その枕元には、安廣が居た。 他に、芽実の両親も来ていた。  芽実は、俺の姿を見つけると、再び不安そうな顔になった。 どうしても、思い出せないのかもしれない。
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