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見上げた顎下が、ふいにちょっと震える。
「…いや…そのつもりだったけど、やめるわ。
親父にも手をつけるなって言われてたしな。
婆さんみてぇなこの辺の人も、景観悪くなると嫌だろ」
言うと、婆さんがうけけけけ、とこの世のものとも思えない金切り笑いをした。
「そりゃそうさねぇ。
この山に住んで数百年だ、あんたみたいな若者の金欲のために壊されたんじゃ 、たまらんね」
俺は肩をすくめた。
そうして婆さんに背を向けて、「じゃあな」と手を振る。
まあ山の状態も分かったし、そのうちどうにかするさ。
そんな俺の胸中をまたも読み取ったのか。
「もしこの山を取り潰すときは、あんたもただじゃすまないと思いなねぇ」
後ろから、婆さんの声がかかる。
「は?」と振り返った先には……もう誰の姿も、残ってはいなかった。
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