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呼び止められて、振り返るとそこには……なんと山姥がいた。
白髪混じりの長髪を振り乱した、しわくちゃの顔の老婆だ。
この21世紀の現代、継ぎはぎだらけの汚ならしい古い着物を着、にたりと開いた口からは、前歯が何本か抜けている。
こんな姿の女は、この時を置いて以降、長い俺の人生の中でも一生涯見ることはなかった。
「キヨシさん」と、その女は俺の名を呼んだ。
「斉藤 清さんでしょう。
この山の地主の息子。
こんな山中までわざわざどうしたね」
婆さんが言う。
俺は「あ、ああ…」とリュックサックの肩掛け部分を手で握りしめて婆さんと向かい合った。
「婆さん、この辺の人なのか?
いや…死んだ親父から、この土地を譲り受けたんで、どんなところか見に来たんだ。
人の手がつけられてない、何もない山だって聞いてさ。実際どんなもんかなぁと」
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