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「婆さん、昔話に出てくる山姥みたいな成りだな。
この辺は確かに栄えちゃいねぇが、その格好はねぇだろ。そりゃ仮装のレベルだぜ」
からかう気持ちで言うと、やっぱり婆さんが「そうかい」と返してくる。
俺は、つい口が滑った。
「まるで本物の山姥だ」
何のてらいもなく言った言葉に…婆さんが…“笑った”。
それは背筋がぞくりとするような瞬間だった。
俺の感情を読み取りでもしたように婆さんはうすら笑いのまま問う。
「それであんた、この山をどうするね。
やっぱり売っ払って潰すんか」
俺は──山を再び見上げた。
婆さんと顔を合わしていられなかったからだ。
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