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定期的な注意喚起のプリントが配布された放課後。
こんな日は不審者情報などマイナス方面の話題が多くなりがちだけど、今日はより雰囲気が重い。
「さえ、ちょっといい?」
「どうしたの葵、神妙な顔して」
いつもは現実的な暗い話はしたがらない葵、
「また、神隠しがあたって聞いたんだけど、何か知らない?」
ただ、都市伝説や怪談にはよく食いつく。
「例の噂ね、神隠しって言ってもいなくなったわけでもないし、私は興味もない」
少し姿が見えなくなったと思たら、記憶があやふやで、全体的に脱力した状態で発見される。
確かに神隠しのような話。
「そんな事言ってていいの? 入院したのはみんな霊感のある人だって話もあるのに」
「それこそ噂話でしょう、何人入院したのかも分からないし、本人に会ったわけでもないんでしょう?」
「それはそうだけど、入院した人の携帯に少女の画像が残されていたって話や先生たちも何か調べてるようだし」
「事が神隠しだとしても、自分から危ない事に関わりに行かなくてもいいと思うよ」
「本当に被害にあった人がいるかも知れなくて、不安に思ってる人たちがいるのに放っておくの?」
「できる事があればやる」
「だったら」
「でも、今は何かできる事もないの、対象者が霊感的なものがある人なら葵も含まれるかも知れないし私も心配してる、だからこそ自分から近づかないで」
「私だってさえの事、心配してるのよ」
「それはありがたいけど、誰かが不安感を煽っているだけの可能性もあるし、天候不順で単純に体調が不安定になる人が増えてるだけかも知れない、とにかく今は確かな事が分からないから」
「さえだったらできる事あるよ」
「かいかぶり過ぎ、私にできる事なんて限られてるから」
「さえ……」
「そろそろ帰るね、葵は部活でしょう?」
「うん……」
話を断ち切る他、私には手段がなかった。
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