1-1

4/5
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「あら、もう皆さん来ておられていたのですね。」 凛とした声が部屋の入り口からして皆振り向くとそこには美しい女性が立っていた。 女性はある程度周りを見渡すとホムラに失礼しますと一礼をしてから部屋に入って指定された席に着く。 「申し訳ありません。書類整理をしていたら遅れてしまいました。」 「構わないよピリス。まだ会議の時間まで結構あるからね。」 「はい。」 そう言ってピリスは顔を上げた。 「後は雪那様と露草様ですね。」 「雪那はともかく露草様は…。」 そういってユスティーは言葉を濁した。 露草。 それはCaneのナンバー2たる司令官の名前。司令官という役職ではあるものの他人嫌いで有名で組織内でマトモに会話できる人物は片手で数えられるほどしかいないとか…。 それ故、会議であろうがその殆どは欠席で顔を出すこと自体が珍しい。実は幹部達の間で露草が会議に出た日は雹が降るとか噂があるのはまた別の話。 「ああ、またかい…。」 そういってホムラはため息をつきポケットからスマホをとりだし軽く操作したあと耳に近づける。 『貴方のお掛けになった電話は現在電波の届かない場所におられるか、電源が入っておりません。』 スマホから流れたのは露草の声ではなく聞き慣れたアナウスの声。ホムラは少し俯きながらピッと通話を切った。 「露草様は欠席…と。」 「すなまいね。今度彼に会ったらキツく言っておくよ。」 そういったホムラは口もとだけ笑っており、目は正しく獲物を狩る肉食獣の様に恐ろしい目付きであった。 そんなホムラを見た海月や幹部達の顔がひきつっていたが廊下からトットットットという何かが走ってくる音で緊張が解れた。 バァン!と勢いよくドアが開くと、そこには包帯らしきもので目隠しをした女性が肩で息をしていた。 「も、申し訳…ございま…せん…!新人の…指導…を…してい…たら…!!」 「まあそうだろうとは思ってたよ。取り敢えず座って落ち着こうか。海月。」 かしこまりましたという言葉とともに海月は部屋の角にあるポットとティーカップを使い、人数分の紅茶を注ぎ各席に置いていく。 「海月様。ありがとうございます。」 「雪那様。ゆっくり飲んでくださいね。あとシロップとミルクはお好みでどうぞ。」 雪那は海月が入れた紅茶を少し冷ましたあと軽く飲む。  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!