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都市伝説など、バカらしい。やはり彼女は実現する女性だったのだ。
俺の執拗なナンパ攻勢に負け、なんとか彼女とアドレスの交換をすることができた。
彼女の名前は、真帆。
皮膚の弱い彼女とは、昼間のデートはままならなかったが、夜逢うことはできた。
だが、彼女の家は、門限が厳しいらしく、9時前には彼女を送らなければならなかった。
家に送るというと彼女は、頑なに駅までで良いとやんわりと断ってきた。
俺はまだまだ、彼女に受け入れられていないようだ。
彼女に何度か、好きだと伝え、キスまでは許してもらえたが、そこからの進展はなかった。
そのことが、余計に俺を燃えさせた。
ある雨の夜、彼女は俺を待っていた。
いつも、俺からの呼び出しに応じる形で逢っていた彼女が、自ら俺の帰りを駅のホームで待っていたのだ。
彼女は相変わらず、駅のホームにもかかわらず、赤い傘をさしていた。
「待っててくれたんだ。嬉しいな。」
俺がそう相好を崩すと、彼女は微笑んだ。
今日は、彼女の家まで一緒に帰ろうと言うのだ。
俺は歓喜した。ようやく彼女に受け入れられた。
電車がホームに入ってくると、彼女は傘をたたみ、俺の手を引いた。
夢のようだ。俺はフラフラと彼女の後をついていく。
「危ない!」
俺は、いきなり、後ろから手を引かれ、体が後ろに倒れそうになった。
そして、鼻先を猛スピードの電車が通り過ぎていった。
手を引いているのは、同僚だった。
「彼女は?無事か?」
俺は、すぐに同僚にたずねた。
「はあ?彼女?どこにいるんだ、そんなもん。お前を見かけて、フラフラしているから、心配になって近づいたら、お前、いきなり特急電車に飛び込もうとしたんだよ。お前、何があったんだ?話して見ろ。」
「女が、女がいただろう?赤い服に、赤いかさを持った女。アレ、俺の彼女なんだ。彼女、どこにいったんだよ!」
「はあ?そんな女はいなかったよ。お前、大丈夫か?」
嘘だろう?
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