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こんな短期間に別の理由で入院を繰り返す人は中々居ないんじゃないかと思う。
逆に凄いとさえ思う。
凄いと思うけど、受験結果は勿論は全て失敗。
失敗も何も受けてすらいないが、願書を送ってはあったので御丁寧に大きめの封筒にA4の紙が折れないように不合格通知が計三通。
なんか追試とかしてくれても良いんじゃないですかね。
俺に救いは無いのですか?
まぁ、という訳で今人生で最大の挫折を味わっている訳だが、これからどうしていこうか。
何と無く高校浪人はしたくない、かと言って親に迷惑を掛けるのも嫌だ。
働くとしてもこの御時世、中卒で職に就くのは難しいだろう。
通信制の高校って今からでも間に合うのかな。
「黒乃、受験全部失敗したんだって?」
「…灰姉」
後ろから声を掛けてきたのは天満灰音(テンマ ハイネ)。
何時も凛とした顔立ちで、長い黒髪を一本に纏めた弟の俺から見ても物凄い美人さんだ。
俺の一つ上の姉で、少し離れた高校で寮生活をしている。
今は春休みで帰省中だが、俺の不幸は話でしか聞いていないのであろう。
因みに俺には双子の妹が居るが、妹は灰姉と同じ高校に通うと言って俺とは違う高校を受験していた。
そのお陰で俺と一緒に事故に巻き込まれる事はなかった。
「灰姉、俺これからどうしたら良いかな?」
「はぁ、まったく。情けない顔をするな。折角のイケメンが台無しだぞ」
自分の部屋の隅で体育座りをしていじけていた俺に、視線を合わすように灰姉も床に腰を下ろして慰めてくれる。
因みに灰姉はそう言ってくれるが、俺は彼女いない歴=年齢の男だ。
イケメンであるはずがない。
見え透いたお世辞だ。
灰姉は何時も凛としていて他人からはキツそうなイメージを持たれるが、実際は誰よりも優しく特に家族には甘い良い姉なのだ。
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