49人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんにちは、天満黒乃君。私は此処の理事長をしている百鬼薄墨(ナキリ ウスズミ)です」
「こ、こんにちは!天満黒乃です!よろしくお願いします!」
「君には昔会ったことがあるんだけど、覚えているかい?」
申し訳無いが全く見覚えが無い。
それが表情に出ていたのか直ぐに真相を教えてくれる。
「まぁ、君が一歳の時だから覚えて無いのも無理無いけどね」
今まで一度も受験が出来ていなかった所為か、かなり緊張してきた。
理事長の冗談も受け流すことが出来ないくらい緊張している。
緊張しながらも何と無く彩葉じゃなくて百鬼なんだ、とか思ってしまった。
「今、黒乃君は彩葉じゃなくて百鬼なんだ、って思ったでしょ?」
「……え!?」
「彩葉というのはね、初代理事長の名前なんだ」
そう言って壁の上の方を指差す。
そこには歴代の理事長の写真が飾られていて、一番端の下に“初代理事長 百鬼彩葉”と書かれていた。
それにしても何で俺が思った事がバレたんだ?
俺ってそんなに分かりやすいかな?
そう思いながら俺は自分の顔をペタペタと触っていると、理事長はそんな俺を見て笑っている。
「取り敢えず、試験を始めようか」
「あ、はい……って、此処でやるんですか?」
「駄目かい?」
「駄目じゃ無いですけど……」
来客用のテーブルに問題を置くのを見て思わず言ってしまった。
普通の教室でやるものだとばかり思っていた。
理事長が試験監督というのも何ともやりにくい。
もちろんカンニングする気なんてこれっぽっちもない。
「主要教科の五教科のテストで一教科一時間。だけど、一人しか居ないから好きな様に進めて良いよ。取り敢えず、制限時間は五時間にしとくから」
「は、はぁ」
気の抜けた返事をしながら問題に取り掛かる。
途中で集中が切れなかったお陰で三時間とちょっとで全て問題を解き終わり、見直しも出来た。
確信を持って答えられたのも八割は越えてるだろう。
自身が無い問題も無理矢理記入したし。
最初のコメントを投稿しよう!