No.9 [2016/01/12]

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----- 2016/01/10 ------------------- 清潔なテーブルクロスがかけられたテーブルの上に朝食が並ぶ。 グラタン、トースト、紅茶。 朝にしては重量感のある食事、それと対象的に小柄な男。 「君の作る朝食はやはり美しい、ありがとう」 男は落ち着いた声で「いただきます」と言うと、スプーンを手に取り、うっすらと焼き目のついたグラタンを口に運んだ。 チーズが手を引きミルクと舞い、味のハーモニーを生み出す。 「んんん。素晴らしいよ。素晴らしい。ありふれた食材が、君にかかれば。ほら、奇跡のようだ」 目を閉じ感じ入る。 男は一口食べては感謝を述べ、一口飲んでは賛辞を述べた。 「ごちそうさまでした」 食器を台所へ運ぶ男。 そして自ら洗う。 男は独り暮らしだった。 ----- 2016/01/11 ------------------- マサヒロは屋上に出ると沈みゆく夕日に目を細めた。 様々な高さのビルの向こうに夕日が沈んでいく。 街がオレンジ色に染まる一時。 遥か下からときおりクラクションが聞こえ、頭上どこかでヘリの音がする。 目を刺すように輝く夕日と、腕時計を交互に見る。 夕日が徐々に沈み、空はオレンジから青黒へ変化していく。 ビルの向こうに赤い光の点が見えた。 徐々に近づいてくる。 ヘリだ。 ただのヘリではない。 機銃にミサイルまで搭載された軍の最新型。 ヘリはホバリングしながらやや旋回。 あるビルに睨みを付けた。
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