No.9 [2016/01/12]

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----- 2016/01/07 ------------------- 奇術師モルトンは白い手袋をはめ、コツコツと革靴を鳴らしながら、イスに近づいた。 黒光りする質の良さそうな一人用のイスには、ジェイコブが座り、モルトンの動きを見つめている。 「ジェイコブさん、これから3つ質問をします。思いついたことを答えていただければオーケーです」 手を膝の上に乗せ少し力が入るジェイコブ。 「動物、と聞いて連想するのは?」 「・・・ユニコーン」 「右手と左手、どちらが重いでしょう?」 「左手です」 「最近見た夢で覚えているのは?」 「ゴミ箱に・・・その、鳥の死骸が入っているのを見ました」 「結構です。ありがとうございます」 モルトンは、手をそっとジェイコブの肩に乗せ、顔を近づけた。 「後ろをご覧ください」 ジェイコブはゆっくりと後ろを振り向き、驚きで目を見開いた。 そこにあったはずの床と壁がなくなっているのである。 ----- 2016/01/08 ------------------- 一人の男が乗った小舟が、丘のように小さな島へ着岸した。 男の顔には眼帯、シワやキズも見られる。 朝霧がうっすらとかかる島を見回して、男は一息ついた。 島は小高い丘のようで悲しげな土といくらかの雑草。 そして、<<墓>>だ。 波打ち際を除いて、等間隔で墓が並んでいる。 儀式的で数学的で論理的な、無情な光景だ。 男はしっかりとした歩みで墓の合間を進み、一つの墓の前で腰を下ろした。 墓をじっ、と見つめる男。 濁った空から雨が降り始めた。 男の後ろから、足音が近づいてきた。
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