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「逆島断雄少尉、気をつけ!」  いきなり逆島継雄作戦部少佐が号令をかけた。反射的にタツオは直立不動になる。 「よく聞け。貴様は今後、訓練や実戦で何人もの敵や、ときとして味方を手にかけるだろう。決戦兵器に至っては十万単位の死者を生む可能性を専門家は指摘している。いいか、日乃元を守り抜きたければ、死者を乗り越えてゆけ。貴様は故郷や母上を守りたいのだろう」  東都の下町にあるちいさな木造の一軒家で暮らす母・比佐乃(ひさの)の顔が浮かんだ。あそこに爆撃があれば、あたり一面が火の海になるはずだった。  世界中の戦争や会戦について学んできたタツオは戦争というものの本質を学んでいた。戦争は勝つと負けるでは雲泥の差だ。とくに本土防衛戦においては敗北と同時に、ひとつの国とそこに暮らす人々、文化が打ち壊される。文字通り殲滅(せんめつ)させられる可能性まであった。  世界は弱肉強食の高度植民地時代だった。絶えざる経済成長を実現するには、資源と市場としての植民地を獲得する侵略戦争に勝ち続けるしかない。タツオ自身が日乃元皇国の無敵の剣(つるぎ)、進駐軍の先兵だった。
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