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「あれからずっとふさぎこんでいるそうだな」
誰に聞いたのだろうか。タツオは兄とほとんど口を利いていなかった。
「ジョージがなにかいったのですか」
「菱川(ひしかわ)少尉から報告は受けている。毎日な。彼を恨(うら)むな。おまえを観察し、報告するというのは、正式な軍務なのだ。作戦部からの命令だ」
菱川浄児(じょうじ)はただひとり残されたタツオの親友だった。そこまで須佐乃男の正操縦者候補というものは、重要なのだろうか。親友に軍務でプライベートまで報告を上げさせるというのは、いくらなんでもやりすぎだ。息を抜く時間がなくなってしまうだろう。進駐軍少尉とはいえ、自分はまだ十六歳で通常なら高校に通っているはずだ。
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