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 タツオはゆっくりとうなずいた。ジョージのいう通りだ。現状ではほんのすこし自分が有利なだけに過ぎない。1年後かあるいは数年後かわからないが、須佐乃男作戦の発令までは、まだまだ長い時間と死力を尽くした競争が待っているのだろう。  ジョージが囁(ささや)くようにいった。 「時間だ」  同時にテーブルと同じ木目のダブルドアが開いた。副官を連れて、タツオの兄・逆島継雄作戦部少佐と情報保全部の柳瀬(やなせ)波光(はこう)だった。保全部には外向きの階級はないが、柳瀬部員は大尉扱いだと噂で聞いている。17名の須佐乃男候補者はその場で直立不動になった。  夕刻の演習場を熱もなく透かす防弾ガラスの窓を背にして、中央に逆島少佐、右手に柳瀬保全部員が立った。副官はドアの両脇を固めている。
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