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「全員、直れ。着席」  誰も息をあわせようと意識した訳ではないが、きれいに音が揃(そろ)った。タツオは黒革の回転いすで、背筋を伸ばし正面を見つめた。 「これより、進駐軍三重匿秘『須佐乃男』作戦について概要を伝達する。わたしと柳瀬部員についてはもう紹介の必要はないな。その前に本日、この北不二演習場に到着したきみたちの仲間を紹介しておこう」  逆島少佐が副官にうなずきかけた。二名の軍人がダブルドアを同時に開いた。楕円テーブルを囲む15歳から16歳の新任士官は一斉に振り向いた。タツオは声をあげそうになった。  先頭には濡れたように黒く光る軍服を身に着けた東園寺彩子の姿があった。特注のオーダーメイド品なのだろう。以前より痩(や)せて細くなったウエストにあわせ、きりりと上着の腰がしぼられている。髪はワンレングスの短いボブヘアだ。タツオの好きな黒髪は30センチから40センチ近く切られている。なにより目が不吉だった。幼馴染みの心の優しい少女の面影はどこにもない。死体に開いた銃口のように黒々と光を吸っている。
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