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 小柄な少女が一歩前に足を踏みだした。よく響く鈴のような声でいう。 「わたくしは、萬満千留(みちる)少尉と申します。近衛四家の第二位、萬家の出身です。須佐乃男の開発は新興成金の五王と池神(いけがみ)家にさらわれましたが、正操縦者の座は誰にも渡しません。以後、お見知りおきを」  萬家といえば、東園寺家が降格される以前は近衛四家の不動の第三位であった。千年を優に超える歳月、日乃元の女皇を守る役を担ってきたが、専門は軍事技術だった。世界最高の切れ味を誇る日乃元刀の製作、鉄砲の大量生産と改良、軍艦や戦車の建造、城や要塞の構築といった軍事テクノロジーをもって、代々の女皇に仕え、そのときどきの戦争で活躍してきた。戦いの技術家集団といえる名門だった。
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