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 萬家の少女は柔らかに一礼すると元の位置に戻った。隣に立つ女性少尉がおどおどと萬満千留の横顔をうかがっている。小声でミチルがいった。 「さあ、さっさと挨拶なさい、カケル」  ぴょんと野ウサギのように跳ねて、西陣織の軍服を着た少女が前に出た。最初のミチルがきりりとした厳しい顔だちの日乃元美人だとすると、こちらはどこか南方の血が混じったような小動物的なかわいらしい雰囲気である。目はアーモンド形におおきく、肌は浅黒い。ビーチでパレオでも着たら似あいそうだ。 「わたしは萬駆化留(かける)。姉のミチルとは双子です。あの、あの、わたしも須佐乃男の正操縦者競争、負けないようにがんばります」  タツオは驚いていた。この小柄な娘も副ではなく正操縦者候補なのだ。東園寺家に「呑龍」、逆島家に「止水」があるように、なにか特殊な時間操作術を、萬家ももっているのだろうか。
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