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どうどう、とジェスチャーでレインを宥めているクロウさんの胸をぽすんと叩いた。
「も、もっと早くに教えてくれたっていいじゃないぃぃ」
「あはっ、小説相手に一喜一憂してるクレアちゃんが可愛くていつも見てるだけにしてたんだよ~」
「可愛くないーまぬけ過ぎるー!!」
「まあまあ。中断させた理由はそれだけじゃなくてね」
ぽすぽす、と頭を撫でて大きな背を屈めて顔を覗き込んできた。その表情は、何かを企んだあやしい笑顔じゃなくて、優しい――あたしの大好きな、それ。
つられて、こっちまで笑顔になってしまうんだから。恥ずかしくて、それどころじゃないっていうのに。
笑顔を見せただけであたしのご機嫌を取ることに成功したクロウさんに反抗すべく、唇を尖らせてみる。くすくすと聞こえる笑い声のおかげで、無駄だってわかるけど。
「はい、これ」
「へ?」
「プレゼント~!」
「わぁっ……!」
ちょっとだけ照れくさそうに目の前に持ってきてくれたのは、オレンジや黄色の元気いっぱいの色で作られた花束! お花いっぱい! 可愛い!!
あたしに!? とびっくりしながら尋ねたら、「当たり前でしょっ」って言われた。照れてるのかな、少しだけ、顔が赤い気がする。
「いやね、今日の依頼主がお花屋さんでね、せっかくだから花のひとつやふたつくらい用意して帰れってうるさくってさ、深い意味はないんだよ、うん、レナにもあるんだよ、ホラ」
「……なあに、それ」
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