◆花束を渡す

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 ほい、と見せてくれたのは真っ赤でふわふわしてて……まるで、猫の尻尾のような花。鉢に植えられていて、沢山あるふわんとした部分が垂れさがっていて。何これ気持ち良さそう。 「キャッツテールって言うんだって。珍しいからってもらってきた。聞けば花言葉は【気まま】らしくて。なんともレナらしいでしょ」 「名前のままのお花なんだね」 「おもしろいでしょ。ちなみに、クレアちゃんのはガーベラだよ」 「ガーベラ……花言葉は?」  あたしの問いかけにクロウさんはぐ、っと息を詰まらせた。けど、逃がさないと言わんばかりに見つめるあたしの視線に根負けしたのか、ちょっと渋りながら教えてくれた。 「色によって違ってくるけど……【前進】【冒険心】そして、【希望】だよ」 「へぇ……色々あるんだねぇ」 「そう。あとは、自分で調べるように! 花屋さんに勧められるまま選んだだけだからね!」  他意はないからね!! と強く言ってクロウさんはレナさんにキャッツテールを渡すべく厨房へと引っ込んでいってしまった。  もう一度、手の中にある花束をまじまじと見てみる。たくさんのガーベラと、もうひとつは知ってる。チューリップだ。それも、黄色の。可愛い。  ぎゅ、っと胸に抱きしめて初めて貰った花束に震えた。すっごく嬉しい。 .
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