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息苦しさといいようのない身体の火照りで、クレアの長い睫毛がふるりと震えた。
「起きたか?」
「んえ……?」
ぼうっとする視界の中、レインの赤い髪ががゆらゆらと揺れている。
「れい……ん?」
名前を呼んだと同時に、あたたかい何かがぬるりと口腔へとやってきた。
それが何か、なんてもうわかっているはずなのに未だ寝ぼけているこの頭ではまともな対応もできず、されるがまま。
ゆるゆると舌を撫でられ、時に刺激するように優しく食み、どちらのものかもわからない唾液がつぅと顎を伝った。
「……ん!」
混乱するクレアをよそに、レインは瞳を細めて唇を重ねたままその手を彼女の夜着へと侵入させた。
火照った身体で感じる彼の手はひどく冷たく、それが一層クレアを駆り立てた。
唇を重ねられたまま、まともな呼吸なんてできやしない。
待って。息をさせて、と言いたいのに、そんな思いとは裏腹に彼女の腕はレインの首へ伸ばされた。
まるで、もっと。とでも言うかのように。
「れいん、」
「ん?」
「や、んん」
拒絶なんてするつもりはないのに、どうして「いや」という言葉が零れてしまうのか。
心と身体と唇が、ばらばらになってしまいそうで。
一粒の涙がぽろりと流れ、深く息を吐き出してレインの胸元を軽く叩きながら彼を見上げた。
「おはよう、クレア」
「……ばか」
「悪いな」
悪態をついた彼女に言い訳をするでもなくさらっと謝った彼は続けた。
「もう止まらないから。覚悟してくれ」と。
瞬間クレアは仰け反り、自分の身体がくちづけだけで彼を受け入れる準備ができていることを感じた。
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