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待って――そう紡ごうとした唇はひゅっと息を飲んで閉ざされた。
「クレア、息しろ」
「だ、って」
「……」
強ばった彼女の身体が少しでも解けるようにと唇を重ね、壊れ物を扱うようにそっと抱き締める。
すると、首筋に手が回り頬をすり寄せてきた。
いつになく素直なクレアの反応にレインの頬が綻び、身体を抱く力が増した。
◇◆◇◆◇
「ばか」
布団から鼻から上だけを覗かせ、クレアはぶすぅと頬を膨らませて呟いた。
それをしれっとした顔で受け流し、彼はクレアの顔を覗きこむ。
「嫌だったのか? 本気で?」
「……」
「ん?」
じとりと睨みつけられるも、余韻の残る濡れた瞳では怖くもなんともなく、レインはふっと笑みを浮かべるだけ。
「はいはい、朝から悪かったって」
「ばかぁ」
彼女以外誰にも見せない笑顔で笑い、拗ねるクレアの頭を撫でる。
慈しむように、愛おしいと言わんばかりの優しい手つきで。
「……」
「あ? 何だって?」
彼に撫でられるがままどんどん俯いていくクレアの言葉を聞き返すと、小さな小さな声で答えた。
「いやなわけ、ないじゃん……レインのばか」と。
衝撃の言葉。
壁に頭を打ち付けたくなるほど動揺したが、さすがに連続で致す訳にもいかず。
「……この、小悪魔」
「え、なんで」
小さく舌打ちをして彼女の髪の毛をくしゃくしゃにしてやった。
Fin.
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