◆花束を渡す

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 にこ、と小首を傾げてほほ笑むクロウさんからは、「いい人ですよ~悪いことなんて考えてないですよ~」という見えない言葉が飛び交っている気がする。  それが気のせいなのか、そうでないのか――推し計るには、あたしはまだまだ子どもで。悶々とする頭を抱えクロウさんを見上げた。 「……なんて顔してるの。あのね、俺はね、レインに嫌がらせはしても、クレアちゃんにはいたずらまでしかしないよ!」 「……はぁ」  だから安心してよね! とビシッと親指を立てられたけど、言ってる意味がちょっとわからない。あと、確かに今のクロウさんの言葉はちょっと大きめだったけど、離れた場所にいる筈のレインからワインのコルクが3個飛んできた意味もわからない。……聞こえたの? 今のが? こんなに離れているのに?  パチパチ、と何度もまばたきをして、クロウさんの額が赤くなっているのを確認してみた。……当たってる。こんなに、離れているのに。 (参考までに、Cuoreはぎゅうっぎゅうに詰めたら、定員50名くらいは座れるくらいの広さのお店。その、端と端の距離で、だ。まあそんなに沢山のお客さんが来たことはないんだけど)  コルクが当たったであろう額をさすり、クロウさんはじとりと遠くにいるレインを見た。レインもまた、同じような視線をクロウさんに。こ、怖い……。 .
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