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気を取り直して浴室へ入る。
シャワーの白い栓を捻って湯を出し、頭から浴びる。
オカルト染みた話では、よくシャワーを浴びている際に後方から気配を感じる人がいると巷で聞くことがある。
不思議にも綾音は、幽霊やオカルトといった非科学的な事象には一切興味を持った事が無い。
自身が他人の記憶を追体験する現象こそ科学で検証できないと彼女の憶測で自己完結しているため、幽霊、UFO、宇宙人等のオカルトに関しては賛同もしなけれな否定もしない、中立的な立場である。
………そんな綾音に、いつもなら何も起きない浴室で、鏡に次いでまたもや異変が起きた。
耳鳴りだ。
それも、多少の耳鳴りでは無い。
AM周波数のラジオでチャンネルをツマミでチューニングしたような音楽が、ノイズ混じりで秒単位に変化していく。
聞いたことも無い曲調、楽器、歌詞、声。
何もかもが聞き覚えの無い音楽。
気分が悪くなった綾音はシャワーを止める余裕すらないまま、その場で踞った。
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