第一話 混沌の中で

9/10

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
 彼女の体感時間では数分後、耳鳴りが治まる。  しかし、突如として常軌を逸した現象が起きた。  今度は鏡の変化どころの騒ぎではない。  彼女の真っ白な裸体に付いた水滴が、何の力も受けず、自ずと揺らぐ。  暫くすると、水滴一粒ずつに尻尾のような突起が生え、四股を丸めた人間の形へと化す。  やがて、水滴は人肌の質感や色に変わり、髪とおぼしき体毛が頭部から生える。  まるで受精した卵子が成長を遂げ、ヒトの形へと変わるように……  水滴から出来上がったのは、綾音と姿形、色が瓜二つの小人。  丁度、彼女の身体を1/10程の大きさに縮尺した分身だ。  それが水滴と同じ数、即ち無数の裸体の分身が綾音の身体に纏わり付いた。  「なんなの!? これ……!!  誰か…誰か助けて!!」  
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加