第二話 もう一人の自分

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 波打ち際に踞って水面で遊び、何気なく呟く私に対し、背後から応えるように声が聞こえた。  「聞きたい?   貴女が何故、ここに居るのか」  私は驚いて、すかさず後ろを振り向いた。  私の背後からゆっくりと歩みよってきたのは、若い二十代くらいの長い黒髪の女性。  麦わら帽子に、涼しそうな白いワンピースに、可愛らしいサンダル。  肌は透き通るように白く、プロポーションも顔立ちも端整で美しい。  出で立ちはよく、怪談話に出てくる典型的な"幽霊"だが、彼女からは恐怖や不気味、といった気配は伝わってこない。  むしろ、生き生きとした温かさというか、物腰の柔い口調から優しさを感じ取れる。  「あなたは、誰ですか?」  私の問いに、彼女は私の左となりに並んでしゃがみ、無邪気な笑みで首を傾げる。  「んー、どう伝えればいいんだろうね。  強いて言えば、貴女がいま見ているこの世界を作った人の……姉貴、的な?」  うわー、胡散臭い……  ふと脳裏で私はそう思ってしまったが、口に出して言ってない筈なのに、彼女にはお見通しなようだ。  
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